川柳の上達法  ⑨時代性   

 

  1・時代の切り取り

     現在(いま)を生きている時代の中で、庶民の眼を通していかに的確に社会や人間や自然を切り取り、

   17音に活 写・描出させるかが大切である。そのためには、多面的な視点での川柳眼が必要であり、表

   現力が必要となる。

     切り取ることとは、4こまマンガのようなものである。5・7・5音の3こまの中に、自己が捉えた事象を文

   字化し映像化していくことである。そのためには、一句が一枚の絵として描かれ、イメージ化されている

   かである。では切り取りのためには、どのようなことに留意すべきなのであろうか。

 

     ①切り取る題材に焦点を絞り込むこと。

     ②絞り込んだ題材に適切な文字を当てはめること。

     ③当てはめた文字に意味の重複をさせないこと。

     ④古い題材の場合には新しい感覚を付け加えること。

     ⑤自然も人間も社会も生き物であることを常に認識すること。

     ⑥起きている事象を一度ふくらませてから凝縮させること。

     ⑦自己の視点と表現力を研き個性を追求すること。

     ⑧余り難しく考えずに自己の感性を信じ続けること。

     ⑨時事川柳との違いを意識すること。

     ⑩経験と体験は財産であり、一句を生むための原動力であること。

 

  2・時代の描出

      切り取った事象をどのように描出するかは、個々人によって千差万別である。だからこそ自己の表

    現力を最大限に駆使するしかない。ただし川柳は多面的でかつ複雑な表現の世界なので、自己の進

    むべき道を模索することも必要である。

     ①伝統的な平明で分かりやすい川柳。

     ②笑いを土台としたユーモア川柳。

     ③詩性を追求する詩性川柳。

     ④心象を描出する心象川柳。

     ☆細分化すればまだまだあるのだが、作品に焦点を当ててみる。

 

     ①の作品として、21年度幌都賞受賞作品から。

         電子音ふえて孤独になる家族   西村 幸芳

       時代をさらりと切り取り、分かりやすい作品となっている。電子音・孤独・柯族の言葉の組み立てに

       よって、現在が見えてくる作品である。

     ②の作品として、21年1月号幌都集ゴシック作品から。

         金ためて月のうさぎに逢いに行く 伯耆 薫

       庶民哀歌のユーモア川柳である。兎に逢いにいける時代背景と、貯まらないお金とのギャップが

       可笑しい。質の高い笑いである。

     ③の作品として、21年度ぽぷら集受賞作品から。

        免疫をつけて枯野を凜と生き   志村 ふみ子

       詩か川柳か、詩的な要因は必要だと思う。だが追求するとなると難題である。要するに自己の詩

       的世界を模索すればいいのである。              

     ④の作品として、21年度あかしや賞受賞作品から。

        納豆をかきまぜている私の無   四分一 周平

       自己の心象を表現することは、重要な課題である。しかし、読者との対話・理解となると難しい問

       題が残る。作品は心象を土台としている。

 

  3・時代の流れ

      時は流れていくので、その流れの中で川柳眼を研ぎすまさなければならない。時事川柳とは違った

    意味での表現が必要であり、時がたっても句意が分かる作品でなければならない。そのためには常に

    人間社会を生きた眼で見つめ、疑問を持ち続けることである。そして自分で詠いたいことを見つけ、自

    分の言葉で表現することが大切である。