川柳の上達法 ⑮ 中七

 

   1・中七の力 

       一句を生み出すときには、上五と下五には誰もが注意を払うのであろうが、余り中七には払わな

       いような気がする。僕が作句する時でもそうなのであるが、もう少し中七の重要性を認識する必要

       があると思っている。それでは、中七とは、一句においてどのような位置を占めるのだろうか。

        ①   上五と下五の関連性をつかさどる。

        ②   上五もしくは下五に対しての説明役を司る。

        ③   上五・下五が主役であるならば脇役を司る。

        ④   一句の流れの冗漫さを引き締める役を司る。

        ⑤   中七によって一句のバランスを保つ役をつかさどる。

        ⑥   中七の言葉の飛躍によって一句の創造性をつかさどる。

      このようなことが中七の役目であり、中七の言葉の安易な使用によっては、一句が単なる説明調な

      句となることは否めない。特に題詠の場合は、上五・中七・下五に課題を読み込む場合が多いので、

      中七の言葉の選択が重要となる。

 

  2・題詠の中七

      札幌川柳社・二十四年八月本社句会 宿題「伸びる」桜岡不二子選より。

          ① 待ち合わせ背伸びしている待っている  象平  前抜

          ② 花丸の一つが伸ばす児の力         正文  前抜 

          ③ 母ちゃんの髭のびてくるおっかない      欄   前抜

          ④ 三升の御鉢を覗く伸び盛り           直倖  五客

          ⑤ 平和かな寿命ばかりが伸びてゆく   百合子  五客

          ⑥ 無精髭伸ばしその名も粗大ゴミ       正文  五客

          ⑦ 追伸や愛のコハゼが外せない     倭文子  人位

          ⑧ コスモスのやさしい風の根がのびる    百華  地位

 

          ⑨ 夢追って伸びたいのちが迷う森    (清)玲子  天位

               守の句は没であった。発想が悪かったのだろうか。同想句があったのだろうか。

               予定調和だったのかもしれない。没句になってから反省しても遅いのであるが、中七の発想力

               が上五と下五との効果を上げ、一句を佳句に導くのだと思われる。

 

   3、中七への想い

              佳句を生み出すためには、中七を吟味する必要がある。

                  ① 単なる上五と下五を結ぶ説明役であってはならない。

                  ② 中七の言葉によって意味を飛躍させる必要がある。

                  ③ 中七は一句のリズム感を担う重要なポイントとなる。

                  ④ 特に安易な助詞の使用には気をつける必要がある。

            披講するに当たっても、上五と下五との間に、間と一拍をいかに適切に入れるかが重要となるの

      で、中七を守ることが基本となる。披講の強弱は中七によって決定づけられる、といっても過言で

      はないので、言葉の選択には十分吟味する必要がある。中七の言葉は目立たないのだが、一句

      の重要なポイントを占めている。