川柳の上達法 ㉙ 川柳の社会力

 

  1、川柳の社会性

       一般的に川柳といえば、面白おかしい、ひやかす、言葉あそび、低俗などと思われているのが実

       情ではないだろうか。

      確かにサラリーマン川柳の台頭によって、社会的には川柳の面白さが宣伝された。ある面におい

      ては、川柳という名前の浸透には一定の役割を果たしたことは、否めない事実ではある。

      だが一面においては、川柳は単に面白ければいいということのみが喧伝され、川柳が持っている

      真の意味合いが忘れ去られているのも事実である。

      サラリーマン川柳やシルバー川柳、各マスメディア川柳や公募川柳などには優れた句もあるので、

      全面的に否定はできない。結果的には、既存の川柳結社や川柳連盟などが、いかに川柳の文芸

      性を訴えていくしかない。しかし、それも難問ではある。

      全国において川柳結社が柳誌を発行し、文芸性の向上や獲得に向けて力を結集している。

      だが、一般の人々が描いている川柳のイメージを、払拭するのは不可能である。それだけ、川柳

      の狂句性と駄洒落性は深部まで浸透しているため、覆すことは至難の技なのである。

 

2、川柳の笑い

      川柳にとっての笑いは、重要な要素である。人間の喜怒哀楽を表現するのであるから、その根

      底には笑いの要素が大きな力を占めている。そのことが、川柳にとっての二面性を抱える要因

      となっている。単なるおかしみと、品のあるユーモアである。

         鰒汁を食わぬたはけに食ふたわけ       狂句

         そっとなけ壁に耳あり隣あり

         忘年会娘ミシュラン父酒乱      サラリーマン川柳

         千の風妻ならきっと千のグチ

         ガガよりもハデだぞウチのレディババ  シルバー川柳

         歩こう会アルコール会と聞き違え

         生きにくいこの世道化で生き延びる     太秦三猿

         楢山に巡回バスを走らせる

      どのように笑わせるか、同じ日本語を使っても、その使い方によって格段の差が表れる。

      狂句百年の負債を返せ、によって始まった新川柳の運動は、川柳の文芸性に向かって大きな

      一歩を記した。しかし、川柳界の内部の問題として一定の成果をあげたのではあるが、文学界

      全般の問題としては短詩型の中では希薄であった。

      それは、川柳界においては、社会的にも認知されるべき川柳作家がいなかったからである。

      六巨頭(川上三太郎、前田雀郎、村田周魚、岸本水府、麻生路郎、椙本紋太)においても、あく

      まで川柳界内部の評価でしかなかったのである。それだけに、プロの川柳作家として生きるこ

      とは至難だったのである。

 

3、社会力

      川柳が社会に与える力としては、どう考えるべきなのであろうか。

         ① 結社を通して地道な努力を続ける。

         ② 笑いのある句を発信する。

         ③ 文芸性を土台としての多方面への発信。(教室・マスメディア等)

         ④ 潜在的な川柳フアンへのPR。

         ⑤ 若年層への浸透。(ジュニア・若者等)

      短歌や俳句よりも入りやすいとは思うのだが、やはりサラリーマン川柳的な句が川柳だと認識し

      ている人たちへ、やさしい川柳の良さを理解させていく努力が求められる。そのためにも、指導

      者の底上げを図っていく必要がある。一人ひとりの力を結集しながら。