川柳の上達法 ①序 章 

 

 川柳はどうしたら上手に作れるようになるのですか、との質問をされることがある。さて、何と答えていいのか迷ってしまう。一般的に言われているのは、①多読、多作、多捨である。人の作品を多く読むこと。最初は何事も模倣からはじまるのだから、模倣しながら多くの句を作ること。そして、いかに多くの句を捨てるかである。

 

 分かったような回答なのだが、最初からこんなことが出来る訳はないのである。確かに初心者にとっての作句についての要点ではあるのだが、僕の経験上からは簡単にはいかないと思っている。ではどうすればいいのか、無責任なのだが回答はないのである。本音を言えば、①川柳を好きになること。②努力を続けること。③本を読むこと。④句会やカルチャーに出席すること。⑤5・7・5音に馴れること。結論を言えば、駄作でも、自己満足でもいいから、作品を作り続けるしかないのである。

 

 直ぐに秀作ができるのであれば誰も苦労などはしない。ましてや、作者がいて選者が存在するのであるから、没句が生まれるのは当たり前なのである。選者だって投句者になった時には、一句も抜かれずに没句を生み出しているのであるから。

 

 僕も川柳を始めて本社新春句会に出席した時には、席題で2句、2月句会は全没で3月と4月句会は4句が入選した。大先輩たちと同一の土俵で競うのであるから、没句になるのは当たり前なのである。だがそのことによって僕の心に火がつき、よしやってやろうと燃えたのが事実であった。各地の句会にも出席し、実体験を積むことによって少しずつではあるが、川柳とは何かを掴んでいったのである。

 

 物事を始めたからには、誰しもが上達したいと思うのは自明である。しかしその道程のためには、数多くの階段を上らなければならない。順調に上れる人もいれば、挫折を味わう人もいる。それぞれの階段を上りながら、自分の生み出す川柳を模索しながら歩めばいいのである。途中であきらめることなく、地道に作り続けるしかないのである。

 

 これから連載する「川柳の上達法」は、カルチャーでの講義資料として長年に亘って執筆したもので、単に上達には結びつかない文章もあることを了解していただきたい。ただし必ずや参考にはなるものと思っている。引用作品や時系列的には違和感があるかもしれないが、執筆の時期がずれているのでご承知願いたい。

 

 いずれにしても川柳の奧は深いので、今でも頭を悩ませているのが現実である。奧が深いからこそのめり込むのであって、苦しみがあるから楽しみが生まれるのだと考えている。今年で48年目に入ったのであるが、これから何年続くのか分からないのだが、皆さんと一緒に川柳の不可思議さを追い駆けたいと考えている。