2025年6月号

 巻頭言

   「道程」

 

   「僕の前に道はない僕の後ろに道は出来る」この言葉を、一度は耳にしたことがある

  人も多いことと思います。この言葉は詩人であり、彫刻家・画家でもある高村光太郎の

  詩「道程」の一部です。

   「道程」は、「ある地点にたどり着くまでのみちのり」という意味を持ちます。詩の

  内容はタイトルのとおり、「ある地点」へと歩みだそうとする決意が謳い上げられてい

  ます。

   札幌川柳社も、今年で67年の「道のり」を歩んできました。この67年間は札幌川

  柳社を支えた先人たちの汗と努力の「道のり」です。

   高村光太郎は、詩の最後に「この遠い道程のためこの遠い道程のため」(これからも

  長く遠い将来への険しい道のりを歩んでゆくためにも・・・)と結んでいます。札幌川

  柳社のこれからの先の「道のり」にはどのようなことが待ち構えているのでしょうか。

   4月に「70年史刊行委員会」が発足しました。まずは70年までへの「道のり」を

  一歩ずつ確実に歩みたいとと思っています。高齢化などによる会員の減、諸物価の高騰

  など諸問題が山積していますが、皆さんとともに新しい足跡を残していけたら・・・と

  考えています。

   会員の皆さまのお力を結集してこの困難を乗り越え前へ進みましょう。

 

      新しい道へ一歩の五七五  佐藤 芳行

    

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    【あかしや集】:佐藤 芳行 選

    

    ・不器用は棚に預けてまだやる気     岩橋千代子 ・・・ 特選句

    ・衣替え箪笥の奥の眠り解く       浜中 道子 ・・・ 秀 句

    ・だれだって終着駅がある定め      加藤 富清      〃

    ・生きること夢のボタンを探す旅     荒木 茂儀      〃

    ・スクワット電子レンジが止まるまで   野島 淑江      〃

    ・筋書きの見えぬドラマを編みつづけ   石川 黎華      〃

    ・七人の敵一人去りふたり去り      荒井 克則      〃

 

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       【ぽぷら集】:沼澤  閑 選

 

    ・未消化が詰まりはじめた砂時計     飯澤 理子 ・・・ 特選句

    ・目の前に崖アクセルは踏み抜いて    一家  汀 ・・・ 秀 句

    ・医師からの身を乗り出して聴く言葉   田村のぶ江      〃

    ・姑からの鍋に煮込んだ春にしん     小川 和子      〃

    ・うす茶碗戸棚の奥に眠ってる      桐澤都志子      〃

    ・老いたって発火しそうな愛はある    澁谷ノリ子      〃

    ・ひっそりと壁に聴かせた昭和うた    福島あけみ      〃

 

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   【幌 都 集】:松本 淳子 選

 

    ・誕生日夢と余命の数合わせ       本多 利雄 ・・・ 金鈴抄

    ・腹の底見えぬ鼻から抜ける声      山本すみれ      〃

    ・火の車運転やはり妻がプロ       長谷たみ子      〃

    ・せっかちと呑気だんだん入れ替わる   村山 君代 ・・・ 秀 句

    ・自国だけ儲けさせてるタリフマン    堀田 幸男      〃

    ・負け惜しみ全部並べて未だ足りず    藤田とし子      〃

    ・ウッカリとグラスに注ぐ休肝日     小家 正善      〃