2022年5月号

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   【あかしや集】:岡崎  守 選 

 

   ・狂ったか平和の重み血にまみれ    後藤 信子 ・・・ 特選句

   ・ウクライナ戦禍涙が止まらない    清水 玲子 ・・・ 秀 句

   ・鯉のぼり心のゆとり見せ泳ぎ     永瀬 和弥      〃

   ・町内に一軒ひるがえる国旗      村形  茂      〃

   ・夜桜に沈めた微熱疼き出す      荒井ともこ      〃

   ・尽くし足りないのでしょうか桜散る  清水ひろ子      〃

   ・お友達たかがスマホの中のこと    高宮まゆ未      〃  

 

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    【ぽぷら集】:松本 淳子 選

   

   ・昨日より一ミリすすむ今日がいい    小杉山雅子 ・・・ 特選句

   ・語り部の四島を追われた日の無念    出雲恵美子 ・・・ 秀 句

   ・鍋奉行仕切り忘れてひとり鍋      岡崎 光子      〃

   ・チョコレート握手のかわり手のひらへ  菊地 昌代      〃

   ・夢と舞う平和を叫ぶ鯉のぼり      橋本利恵子      〃

   ・辞書にない流行り言葉がとおせんぼ   中津 遊水      〃

   ・結び目にゆとりが出来て共白髪     櫻井 裕太      〃

 

 巻頭言

    「日常の扉」

   

    桜が咲き、雀たちが笑顔で会話をしています。そんな明るい情景を見ながら、

   早く日常が戻らないかな、と晴れない心を慰めています。

    平穏な日常、日常の会話、制約のない集い等が、如何に大切なのかを痛感さ

   せられています。マスクをするのが当たり前の生活となり、人間関係の希薄さ

   が気になります。そして、素顔を忘れた結び付きの薄さを感じています。

    句会や大会が中止や誌上での開催となり、顔を会わせる機会が極端に減って

   おります。こんな時だからこそ、川柳をやっていて良かった、との多くの声が

   寄せられます。それは孤独ではない、仲間がいてくれる、作句が心の拠り所と

   なる、等の心の結び付きの輪が有るからではないでしょうか。

    連絡が出来る友達が、川柳誌によって切磋琢磨が、非日常の扉を開けてくれ

   るからではないでしょうか。五七五音に心を委ねて、苦境を乗り越えようとす

   る作家精神が、日常を支えてくれるからではないでしょうか。

    喜怒哀楽を詠う川柳だからこそ、苦境を打開する強い詩心が沸き起こり、明

   日の光が見えるのだと思います。五月の陽光を浴びて、心の扉を開けて、再会

   の笑顔を待ちましょう。

 

       「晴れやかに開けよう日常の扉」  岡崎  守

 

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  【幌 都 集】:澤野優美子 選

 

   ・しがらみが切れてなくした糸切歯    福島あけみ ・・・ 金鈴抄

   ・靴紐をぎゅっと結んで君の胸      亀貝えみ子      〃

   ・卒業の季節に開く一頁         桐澤都志子      〃

   ・人間はミスを重ねてヒトになる     木下 昭夫      〃

   ・わが家には天動説がひとり居る     高橋 節也      〃

   ・春の陽をメインデッシュに新メニュー  飯澤 理子 ・・・ 秀 句

   ・ねむれない蕎麦殻枕こそこそと     浜田  恵      〃

   ・ハラハラを想定内と腹据える      米澤とよ子      〃

   ・誇らしく見える夫の表札名       佐藤 園江      〃