2020年 4月号

巻頭言

  「舞台の主役」

 

    1句を吐き出しながら、舞台の配役のことを考えています。

    句想を広げながら、5・7・5と指を折り、語彙の森から言葉をつまみ上げていきます。

   とその時に、ふと思い出すことがあります。誰のための舞台なのか、主役は誰なのか。そして

   脇役の存在は。

    句の底には、①私がいること。②舞台が広がること。③私を支えてくれる脇役がいること。

   ④物語が生まれること。⑤鑑賞者がいること。などを意識しなければなりません。独りよがり

   であっては、17音は光を放ってはくれないのだ、と思っています。でも一面では、自己満足が

   なければ続けられないのも真実なのです。

    僅か17音の舞台ですから、想いを最大限に吐き出すことが重要となります。でも川柳は魔物

   ですので、完成度の高い舞台は常に作られるものではありません。そこで悩んでいるのです。

    視点、想い、発想、語彙、組み立てなど、魔物には色々な要素が求められます。その要素を

   練り混ぜて1句が生まれます。ふっと浮かぶか、時間をかけて作るか、創作とは面白いものです。

    舞台の主役とは私であり、私の心なのです。大いに自信を持って主役を演じたいと思います。

 

                「脇役も主役も生きる一句とは」  岡崎 守

 

**************************************************************************

【あかしや集】:浪越 靖政 選

 

   ・ワンチーム病魔相手の患者部屋    佐藤 賢爺 ・・・ 特選句

   ・ドシラソファぼくは宇宙のはぐれ者  梶川 詠児 ・・・ 秀 句

   ・じんわりとひとり芝居が熟れてゆく  梶原 百華      〃

   ・感性のどよめき頻るさくら波     大久保貴美子     〃

   ・蟠りとけてさくらがワッと咲く    酒井 麗水      〃

   ・呑み込んだ嘘が今でも生きている   清水ひろ子      〃

   ・チョコパフェの苺みたいな君が好き  菊地ひかり      〃

 

**************************************************************************

【ぽぷら集】:佐藤 芳行 選

   

   ・空想の翼広げる弧の時間      山本 貞子 ・・・ 特選句

   ・穏やかに生きた証のものわすれ   井上 サヨ ・・・ 秀 句

   ・この部屋に温もりがある友がいる  櫻井 裕太      〃

   ・死神に見つからぬよう生きている  高橋かおり      〃

   ・神に似て失敗ばかりするアダム   折原 博美      〃

   ・思いきり陽をあびたくて髪を切る  中川 孝子      〃

   ・やわらかい答が届く春ですね    横堀由紀子      〃

   ・落款で色紙に顔が立ちあがる    遠藤 俊二      〃 

 

**************************************************************************

【幌 都 集】:鈴木 英雄 選

 

   ・春を待つ窓辺の花とスクワット   大須田峰子 ・・・ 金鈴抄

   ・父ぽつり吐いた言葉の重さ知る   福田 正響      〃

   ・飛び切りの笑顔の遺影撮っておく  石出 栄光      〃

   ・月が冴え私の涙凍らせる      宮澤 風女      〃

   ・厳冬も脂肪貯金が助け舟      谷野 幸成      〃

   ・介護経てわたくしだけの第二章   出雲恵美子 ・・・ 秀 句

   ・大口を開けて目薬やっとさす    佐藤 園江      〃

   ・誕生日今日は派手目のマフラーで  長内 寿一      〃