巻頭言
「舞台の主役」
1句を吐き出しながら、舞台の配役のことを考えています。
句想を広げながら、5・7・5と指を折り、語彙の森から言葉をつまみ上げていきます。
とその時に、ふと思い出すことがあります。誰のための舞台なのか、主役は誰なのか。そして
脇役の存在は。
句の底には、①私がいること。②舞台が広がること。③私を支えてくれる脇役がいること。
④物語が生まれること。⑤鑑賞者がいること。などを意識しなければなりません。独りよがり
であっては、17音は光を放ってはくれないのだ、と思っています。でも一面では、自己満足が
なければ続けられないのも真実なのです。
僅か17音の舞台ですから、想いを最大限に吐き出すことが重要となります。でも川柳は魔物
ですので、完成度の高い舞台は常に作られるものではありません。そこで悩んでいるのです。
視点、想い、発想、語彙、組み立てなど、魔物には色々な要素が求められます。その要素を
練り混ぜて1句が生まれます。ふっと浮かぶか、時間をかけて作るか、創作とは面白いものです。
舞台の主役とは私であり、私の心なのです。大いに自信を持って主役を演じたいと思います。
「脇役も主役も生きる一句とは」 岡崎 守
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【あかしや集】:浪越 靖政 選
・ワンチーム病魔相手の患者部屋 佐藤 賢爺 ・・・ 特選句
・ドシラソファぼくは宇宙のはぐれ者 梶川 詠児 ・・・ 秀 句
・じんわりとひとり芝居が熟れてゆく 梶原 百華 〃
・感性のどよめき頻るさくら波 大久保貴美子 〃
・蟠りとけてさくらがワッと咲く 酒井 麗水 〃
・呑み込んだ嘘が今でも生きている 清水ひろ子 〃
・チョコパフェの苺みたいな君が好き 菊地ひかり 〃
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【ぽぷら集】:佐藤 芳行 選
・空想の翼広げる弧の時間 山本 貞子 ・・・ 特選句
・穏やかに生きた証のものわすれ 井上 サヨ ・・・ 秀 句
・この部屋に温もりがある友がいる 櫻井 裕太 〃
・死神に見つからぬよう生きている 高橋かおり 〃
・神に似て失敗ばかりするアダム 折原 博美 〃
・思いきり陽をあびたくて髪を切る 中川 孝子 〃
・やわらかい答が届く春ですね 横堀由紀子 〃
・落款で色紙に顔が立ちあがる 遠藤 俊二 〃
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【幌 都 集】:鈴木 英雄 選
・春を待つ窓辺の花とスクワット 大須田峰子 ・・・ 金鈴抄
・父ぽつり吐いた言葉の重さ知る 福田 正響 〃
・飛び切りの笑顔の遺影撮っておく 石出 栄光 〃
・月が冴え私の涙凍らせる 宮澤 風女 〃
・厳冬も脂肪貯金が助け舟 谷野 幸成 〃
・介護経てわたくしだけの第二章 出雲恵美子 ・・・ 秀 句
・大口を開けて目薬やっとさす 佐藤 園江 〃
・誕生日今日は派手目のマフラーで 長内 寿一 〃