2019年11月号

 巻頭言

      「作品の評価」

 

   各地の句会や、全道大会や全日本大会等では、毎年多くの作品が評価されています。そして、北海

  道知事賞や文部科学大臣賞などが授与されています。

   さて、作品の評価基準となると難しい一面を抱えています。評価とは、選者の持つ選句眼や川柳理

  論によって決められます。平たく言いますと好き嫌いに結びつきます。共選の場合には、特に選者の

  思考が顕著に現れます。選者の経験年数や、男性か女性かによっても差異が生まれてきます。逆に、

  その差異があるからこそ、作者も挑戦する意欲が増すのかもしれません。

   受賞した作品に対しての、読者側の評価も多種多様となります。それは作品を理解できるか否かの

  問題です。その底には、柳歴や感性、作品が具象か抽象か等が含まれています。一読して理解できる

  作品から、深みのある作品へと変化しているのも事実なのです。

   趣味か文芸かの議論は、果てしなく続く問題です。楽しく川柳を、分かりやすい川柳を、老後に笑

  いの川柳を、脳を活性化させるための川柳を、川柳で生き甲斐を、等を大切にしつつも、個人の期待

  ことする文芸性を無視することも出来ないと思っています。評価する眼を養いましょう。

 

      句の奥を探る階段のぼりつつ     岡崎 守 

 

 

****************************************************************************

【あかしや集】:岡崎 守 選

 

  ・キャベツ割る北の女の腕っぷし      高宮まゆ未 ・・・特選句

  ・やっとなれた主役 敬老日です      柴田加奈子 ・・・秀 句

  ・消費税値上がり分は寝ていよう      加藤 民子     〃

  ・ぽつぽつと夢を植えこむ予定表      小原 金吾     〃

  ・マンネリになったようですどっこいしょ  清水ひろ子     〃

  ・豆の木をゆっくり登るつもりです     田村 三郎     〃

  ・背にふれて日溜まりのようですあなた   柏木 俊子     〃   

 

****************************************************************************

【ぽぷら集】:鈴木 厚子 選

 

  ・生かされた命粗末にするもんか      荒井 俊光 ・・・特選句

  ・秋深しリスも爺も冬支度         片山 葉一 ・・・秀 句

  ・家路へと急ぐ背中を追う西陽       井上 サヨ     〃

  ・階段へ反抗してる膝小僧         山本 貞子     〃

  ・かぎられたいのちみまもりあたためて   菊地 昌代     〃

  ・アルフィーも陽水も聴く秋の午後     小澤 絹子     〃

  ・どう生きる 今更おそい祭あと      岩橋千代子     〃

 

****************************************************************************

【幌都集】:酒井 麗水 選

  

  ・秋の夜の写経の文字は楚楚となり   原田つとむ ・・・金鈴抄

  ・大凶を引いて右脳がさわがしい    福島あけみ     〃

  ・いい人を辞めて裸の僕になる     石出 栄光     〃

  ・ひらがなで届く碁敵の挑戦状     遠藤 俊二     〃

  ・飲みかけのワイン残して終わる恋   大坪 寒流     〃

  ・かき分けて先ゆく君の背がまぶし   高橋かおり ・・・秀 句

  ・断捨離と捨てた思い出光りだす    橋本利恵子     〃

  ・同期会加齢を華麗に恋自慢      長内 寿一     〃